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2016年01月29日

彼らの没落を思った


人の倒し方。その基礎を教えてくれたのがコウ先生だった。父はそのことに強く反対した。もっと子どもらしいことをさせよう、と。けれど父の意見を母が聞き入れることはなかった。母は誰よりも強かった。ハネくんはおれのことを強いと言ったが、母に比べればおれなんてセルゲームのときのヤムチャ同然だった。
「おれが武術を習ったのはコウ先生。田所寛治なんて名前じゃない」おれは言った。
「コウってのはたぶん黄ってことだと思う冷氣機邊個牌子好。その人の別名は、黄泉だから」
「……は?」
「おれにも同一人物かどうかまではわからないけど、少なくとも、おまえの先生とその田所寛治って人にはつながりがある。なあ、蓮。おれらが今見ている世界の裏側には、おれらが想像できないような世界が広がってる。そしてその世界にはおまえも無関係じゃない」
「何の話?」
「1+1が2じゃない世界だよ」

 父のことを思った。義父のことを思った。彼らの没落を思った。息子のおれが言うのもなんだけど(あるいはそう信じたいだけかもしれないけど)、父は完璧な父だった
樂聲東芝冷氣比較。古い洋画を鑑賞することが趣味で、広範囲に亘る知識があり、論理的で理知的だった。ギャンブルをしたり、酒に酔うこともなかった。自殺をする理由がわからなかった。仕事でヘマをするような人には思えないのだ。義父だってそうだ。あれだけ酒が好きだったにもかかわらず、酔いつぶれたところを見たことがない。誰よりも強い責任感、実行力。細やかな心配り。豪胆な中にも繊細さがあった。彼の会社が傾く? 信じられなかった。
 ものごころついた頃の母、小学生の頃の母、中学生の頃の母鑽石能量水 騙局、記憶の中の母の姿はほとんど変わらない。母は笑わない。怒らない。感情を表に出しているところを見たことがない。おれは母が怖かった。逆らうことができなかった。小さい頃からずっとだ。だからできるだけ近くにいたくなかった。一緒に住もうという義父の申し出を断ったのは、そういう理由もある。

「ねえ、ハネくん」おれは言った。「復讐って、その友だちを殺すってこと?」
「殺すというよりも、そいつがやろうとしてることを阻止したい」
「でも、コウ先生に弟子入りするってことは、長期的な計画ってことだよね」
「そうだな」
「今話を聞いてて、違和感があったんだけど、指摘してもいい?」
「いいよ」
「あなたは誰?」
「ん?」
「羽生亘宏くん。それはわかってる。ハニュウノブヒロ。19歳。通信制の高校に通う高校二年生。人望があり、仲間内ではリーダー的存在。代々職人を輩出する家系に生まれ、お父さんの会社で鳶として働きながら高卒の資格取得を目指している。趣味は実益を兼ねたスロット。お酒が好き。キャバクラが好き。彼女はいないけど、遊び相手は何人かいる」
「何かあれだな。客観的事実を並べられただけなのに、気恥ずかしいな」
「そんな人が復讐?」
「人の外面と内面はいつだって乖離してる。おまえはまだわかんねえかもしれないけどな」
「どうしたの。論点をずらして」
「何の話がしたいんだよ」そう言い捨てて、羽生くんはタバコをくわえた。
「おれにはあなたが人に裏切られた人には見えない。言葉は悪いけど、話ができすぎてる感じがする」
「はっはっは」羽生くんはわざとらしく笑った。「続けて」
「ここからは仮説だけど」そう言った後、おれは下を向いて、息を吐いた。「ハネくんは誰かに頼まれて、おれに近づいた」
「何だそれ。自意識過剰にも程があるだろ」
「そうかな」
「おまえ、自分が特別な人間だと思ってんだろ?」
「思ってるよ」おれはそう言った。
「おれもだ」意外なことをハネくんは言った。
「おれがおまえに興味を持ったのは事実だ。だけどおれはおまえよりも自分に興味がある。というよりも、おれの目に映る世界に興味がある。おまえの目に映る世界よりもな。おれはおれの世界のために、おまえの力を借りたいんだよ」
「じゃあ賭ける?」
「何を?」
「おれとハネくんと、どっちが特別か」
「……それ、どうやって証明するんだよ」
「ハネくんの特別性を見せてよ」
「わかった。でも今の現場が終わるまでは自由に動けない。それ終わったら長めに休み取れるし、ちょうど学校も夏休み入るからそんときな。今日は先輩の顔を立てとけ」そう言ってハネくんは伝票を持って立ち上がった。
「ごちそうさまです。先輩」

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Posted by guiei at 11:36Comments(0)option